Distance‐マイナス5cm‐
家の前に面している道路に出ると、叶チャンが立っていた。
叶チャンは携帯を眺めていて、携帯画面の照明が、叶チャンの顔を明るく照らしていた。
「……叶チャン?」
遠慮がちに呼ぶと、叶チャンはあたしに気付き、顔を向けた。
「これから花火やんねぇ?」
携帯を持つ逆の手には、手持ち花火の袋が握られていた。
「え、花火?何で?」
叶チャンに花火誘われるなんて。今まであったかな……
「今日、花火大会中止だったみたいだし。のぞみがまた泣いてんじゃねーかなぁって思ってな」
叶チャンは優しく笑った。
何でなんだろう。
叶チャンの笑顔を見るだけで
叶チャンが隣に居るだけで
幸せを感じちゃう。
「そんな事くらいで泣かないもんッ」
「お前忘れたの?昔、花火大会中止になって泣いた事あったじゃん」
「そ、そんな事、あったっけ?」
「あった」
苦笑する叶チャンに、膨れるあたし。
あった……かも。
てか、あった。
叶チャンに花火誘われたの、これで二回目だったね。
あたしが忘れてた事、叶チャンは何で覚えてるの?
なんて聞けない。