Distance‐マイナス5cm‐



あたしはTシャツにスエット、足元はサンダル。

なんていかにも、くつろいでましたルックで、叶チャンと公園へ向かった。



公園には水溜まりができていたり、地面は濡れていたけど、叶チャンと花火ができる事が嬉しくて、そんな事はどーだって良かった。




持たされた花火に火を点けてもらい、その花火で、叶チャンの持った花火にも火を点けた。



キラキラ輝く小さな花火。


お互い、自分の花火で、相手の花火に火を点ける。





こうやって、二人で笑い合って遊んだのなんて、どれくらいぶりだろうね。



花火の明かりが叶チャンを照らす度、あたしは胸が締め付けられるんだ。


ドキドキする。



ねぇ、今でもあたし、叶チャンの事――……







はッと気付くと、線香花火の玉が、ぽとッと落ちた。


「のぞみ下手だなぁ」


そう言って、またあたしに新しい線香花火を持たせてくれる叶チャン。




「……叶チャン」



あたしの持つ線香花火が、パチパチと音を立て始めた。



「……ん?」



優しく微笑んだ叶チャン。


あたしは、涙が頬を伝っただけで、それ以上何も言えなくなった。
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