Distance‐マイナス5cm‐
あたし、何で泣くのかな。
どーしてこんなに切ない気持ちになるのかな。
涙は、止まらない。
「……綺麗だね」
あたしは、線香花火を見つめた。
「……形がある物は、いつか壊れる」
叶チャンは静かに言った。
「……どーゆう意味?」
あたしはまだ、顔を上げられない。
「始まりがあったら、終わりもくるんだ……」
「……叶チャン?」
あたしの線香花火は、またぽとッと落ちた。
でも叶チャンは、あたしに新しい線香花火を持たせてはくれなかった。
「恋人とか、結婚って肩書きに、何の意味がある?そんな肩書で一生一緒に居られるんだったら、俺は、俺は……」
開くはずのない鍵は今も開かれてはいないけど、鍵穴からは、もうずっと前から、抑えようのない気持ちが溢れていた。
「俺は、お前とずっと一緒に居られるんだったら、いくらでもそうしてた。でも、違うだろ。一生なんて誓ったって、そんなの……」
叶チャンの、震える声。
ねぇ、涙が……
涙が止まらない。