Distance‐マイナス5cm‐
こんな時にまで……
こんな、自分が辛い時にまで、人の心配なんてしないでよ。
「……うん」
気の利いた言葉も掛けられない。
何を言っても、月並みな事しか言えない気がする。
それはきっと、尚更結夢を傷付けるよね。
あたしはただ、結夢の隣を歩いて、他愛ない話をする事しか出来ない。
「そいえば二人で帰るの久しぶりだね。いつぶりかなぁ……」
言った後に後悔した。
結夢と二人で帰るのは、クリスマスプレゼントを買いに行こうって計画して、結局喫茶店で恋ばなして終わった日以来だった。
俯いていると、結夢はあたしに笑いかけた。
「ずっと分かってたの。天耶はお姉の事が好きだって。だからあたしも冷めちゃった」
結夢のお姉さん。
結愛(ユア)サン。
タカヤンとは高校時代の同級生で……
でもそんな事って。
「冷めちゃったから、もうイイの。やっぱり男なんて信用するんじゃなかった」
嘘だよ。
冷めたなんて、嘘でしょ。
じゃあ、じゃあ何で……
「結夢、辛い時は泣いてイイんだよ」
そんなに涙を溜めてるの?