Distance‐マイナス5cm‐
それにしても人が多過ぎなんだけど。
この学校の生徒も多いけど、一般の人達も。
何で?
空いてる椅子はないかとキョロキョロしていると、ステージの前に、見覚えのある女の子を発見した。
「綾チャン!」
あたしが声を掛けると、その娘は振り返り、笑顔で駆けてきた。
「のぞみ先輩、見に来てくれたんですか」
綾チャンはあたしに笑顔でそう言って、誠には小さく頭を下げた。
誠も小さく頭を下げる。
美姫があたしの事を「のぞみサン」なんて呼ぶから、綾チャンはその影響で、あたしの事を「のぞみ先輩」と名前で呼んでくれる。
それが何だか嬉しかったりもする。
「見に来たんだけど凄い人だねぇ。何でこんなに集まってるの?ビックリしちゃった」
「みんな多分、美姫チャンを目当てに来てるんですよ。パンフレットに美姫チャンの写真載せてるんで、それ見た人達だと思います」
綾チャンは苦笑いを浮かべた。
はぁ〜、納得。
どうりで一般のお客サンも多いはずだ。
誠も苦笑いを浮かべた。