Distance‐マイナス5cm‐
劇も終わり、手を振りながらあたしと誠を見送ってくれる綾チャンにお礼を言って、体育館を出た。
昇降口と校門の間にある庭に来ると、沢山のクラスがお店を出していた。
焼きそば屋サンや豚汁屋サン、色んな種類のパンを売っているクラスもある。
あたし達は人の波を縫う様にお店を覗く。
一通り回った所で特に何を買うわけでも無く、文化祭の雰囲気を満喫しつつ、庭に備え付けられているベンチに腰を下ろした。
「文化祭って楽しいねぇ」
「のん見てると分かるよ」
あたしは傍目からも分かるくらい、そんなに目を輝かせながら歩いていたのか、誠は苦笑した。
「だって去年はずっと教室居たしぃ。まぁ、楽しかったけどね」
今年はまた、違った楽しみがある。
去年の文化祭はずっとドキドキしてて……
誠の所為でね。
今は隣に居る事が当たり前みたいに感じる。
「誠も美姫も、変わったね」
美姫とは去年のクリスマスに知り合ったけど、今の美姫はあの頃とは全然違う。
誠も去年の文化祭以来、凄く真面目になった気がする。
もう、バカ殿じゃないかもね。