Distance‐マイナス5cm‐


ふと、校門に視線を向けた。


そうしたのには特に理由があったわけじゃなかったけど、何と無く胸の苦しさを紛らわせたくて、ただ遠くを眺めてみた。





でもそこに予想外の、見覚えのある人を見付けた。








タカヤン――






そんなに面識があるわけじゃないけど、結夢を迎えに来るタカヤンを前に一度紹介された事はあったし、校門に駆けて行く結夢の後ろ姿と一緒に、何回か見た事もあった。




今更、どーして来たりするの。

結夢をあんなに傷付けたのに、どーして来れるの。



結夢がタカヤンを見つけちゃう前に、帰ってもらおう。



「誠、ちょっとここで待ってて」

あたしは腰を上げ、校門へと向かおうとした。


「のん、どーした?」

あたしと一緒に腰を上げる誠に「ちょっとね」と言って軽く微笑み、手で制止した。






タカヤンが何の為に来たのか

結夢がどれだけ傷付いていたか

あたしはキッチリ話したい。



そんな思いから、大股で校門へと歩みを進めた。









だけどタカヤンの話しを聞いた時、あたしは呆然とした。
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