Distance‐マイナス5cm‐
――そうだったんだ……
「あの、ちょっと待っててください!」
あたしはタカヤンにそう言って、踵を返した。
結夢に伝えないと。
タカヤンが来てるって、伝えないと。
誠の待つベンチを通り越し、名前を呼ばれた気がしたけど今は結夢の元に向かう事に意識が集中していて、足は止められない。
そのまま昇降口を上がり、廊下を走って、学食の近くの特別教室へと勢いよく入った。
喫茶店はもう閉店したらしく、お客サンは居なかった。
結夢も叶チャンもピロリンも制服に着替え、三人で話していた。
「結夢!タカヤンが来てるよッ!!」
あたしは結夢に駆け寄った。
結夢は驚いた顔をして、すぐに俯いた。
「結夢、タカヤンの話し聞いてあげて」
俯く結夢の顔を、下から覗き込む。
その俯いた顔は、今にも泣き出しそうだった。
「もう、話す事なんてない。天耶はお姉を好きだって事実は変わらないし、天耶が今更何言ったって、信じられない……」
結夢はポツリと呟いた。