Distance‐マイナス5cm‐
何を話しているのかはあたしの場所からは分からなかったけど、お互いに辛そうな顔をしながらも、微笑んでいた。
そしてその辛そうな表情が取れて、お互いが本当の笑顔を見せた時、タカヤンは校門を出て行き、結夢はあたしの方に向かってきた。
あたしも微笑んで迎える。
「久しぶりに話したなぁ」
「そっかぁ」
それだけ話すと、静かな時間が流れた。
でも気まずい沈黙じゃない。
辛い沈黙でもないんだ。
「あたし、天耶と付き合えて良かった。天耶にはいっぱい謝りたいし、でもいっぱい感謝したい……」
呟いた結夢は、清々しい顔をしていた。
「あたし、もっともっとイイ女になってやるんだから。絶対!」
空を見上げた結夢の頬に、涙が伝った。
でもそれはきっと、悲しい涙なんかじゃないから。
始まりの涙。
新しい始まりの涙だよね。
一つの恋が終わって、もうその二人の糸が交わる事は無いのかもしれない。
交わらず、絡まってしまった糸。
そしてほつれていった糸。
また、始まりはあるから。
少しだけ成長した自分と一緒に。