Distance‐マイナス5cm‐
うぅ〜……
眠い。
眠気が覚めないまま、二日目を迎える。
あたし達は、流暢な日本語を話す北京のバスガイドサンに案内され、天安門広場へとやってきた。
ここテレビとかで見た事あるッ!
「結夢ッ、あの写真の人誰だっけ?」
日本では考えられない程自転車が行き交う広場。
そこにある門の中央に、大きく顔の写真みたいなのが飾られているのを発見して、指をさした。
「あぁ、毛沢東でしょ。しかも写真じゃなくて絵じゃない?」
「もうたくとう……」
「あの人の名前」
名前を聞いてもいまいちピンと来ないあたしに、結夢は苦笑した。
「中学でも習ったじゃん。それくらい知っときなよ。昨日も毛沢東ライター売り付けられそうになってたんだから」
昨日……
そういえば商売熱心な中国の人が、天壇公園に沢山いたな。
あのライターはこの人だったんだ。
じゃあこの人はライター考案した人?
そう言ったら、結夢に爆笑された。
「しッ、知らないんだから仕方ないでしょー!」
ふんッとそっぽを向いたら、すぐ横でこの会話を聞いていたらしいピロリンにも笑われてしまった。