Distance‐マイナス5cm‐
あたしは今、ホテルの赤い絨毯の上を軽快に駆けている。
あたしが今着ている、赤いチャイナドレスと色が似ている。
足元は、紙でできた白いスリッパ。
本当は部屋でしか履いちゃダメみたいなんだけど、細かい事なんてイイじゃん。
ダメ?
そしてそんな格好で向かう先は、男子達の部屋の棟。
学校で借り切ったこのホテルは二棟に別れていて、男女で棟は別々なんだ。
この広くて高級感溢れるホテルを迷子になりながらも駆けている。
男子達の棟に到着した時、あたしは持っていたしおりを開き、このホテルの案内図を確認した。
誠の部屋は305。
305の部屋を探すべく、部屋のドアに書かれた数字をチェックしていく。
303……
304……
305!あった!
コンコン
「誠ぉ〜」
ノックをしながらドアに向かって誠を呼ぶ。
この姿見たらなんて言うかなぁ。
楽しみ。
程なくしてドアが開き、出てきたのは宮下クン。
「あれぇ、のぞみチャンチャイナ!?」
そう言って宮下クンは、あたしの顔から爪先まで視線を這わせた。