Distance‐マイナス5cm‐

「ひ、久しぶり」


誠も呆気に取られた様にそう言って右手を上げる。



そして少しの沈黙の後、あたし達は吹き出した。




「つかのん、そんなカッコでここまで来たの?」


「え?うん、そーだけど」


「バカか」


「なぁッ!褒めてよぉ!」


あたしはベッドに座りながら、目の前に立つ誠を見上げて睨んだ。



そうしたら、誠はいきなりあたしを抱きしめてきて。


「そんなカッコでうろちょろすんなよ」


頬っぺたに触れる濡れた髪。

シャンプーと石鹸の匂い。

耳元で囁かれる、優しくて甘い声。



あたしの心臓は、激しく脈打った。



そしてあたしはそのまま、ベッドに押し倒された。




「なッ、あのッ、誠?」


「ずっとのんに会いたいと思ってて、それなのにいきなりそんなカッコして来るから……」


誠の髪から落ちた水滴が、あたしの頬を濡らした。


誠はその水滴をすくった親指を、そのままあたしの唇に這わせる。



「可愛いよ」


優しく笑う誠。




あ、あの、何だかキャラが違う様な気がするんですけどぉ!


なんて思いながらも、あたしの心臓はドキドキ。
< 378 / 481 >

この作品をシェア

pagetop