Distance‐マイナス5cm‐
あたしと結夢はお互い顔を見合わせた後、耳をそばだてた。
“明日、やっと帰れますね。実は私、修学旅行の付き添い5回目なんですよ”
“吉田先生は長いですからねぇ”
担任だ!
遠かったその声は、確実にあたし達の方に近付いて来ている。
部屋を出てるくらいならまだ許されても、男子の棟に来てるの見つかったら、絶対何か言われる。
どーしようどーしようと、その声のする方と結夢の顔をキョロキョロ見ると、結夢は突然あたしの手を引いて、そのまま男子達の部屋がある廊下へと走った。
「ゆ、結夢ッ!?」
小声で尋ねると、結夢は制服のポケットからしおりを取り出して何かを確認しだした。
そしてそれをまたポケットにしまうと、ドアに書かれた部屋番号をチェックし始める。
「結夢ッ!?」
あたしがまた小声でそう呼んだ時、結夢は小さく「あった」と声を上げた。
そして412と書かれた部屋のドアをノックする。
コンコンッ
「ちょっと開けてッ。早く開けてってばッ」
コンコンコンッ
結夢は小声で中の人を呼び、何度もノックした。
すると、その部屋のドアが開いた。