Distance‐マイナス5cm‐
そのドアを開けたのは、呆気に取られたような顔をした叶チャンだった。
えッ?えッ!?
ここ、叶チャンの部屋!?
あたしも呆気に取られた顔をしながら突っ立っていると、結夢はまたあたしの手を引いて、部屋に入って行った。
「ごめんねぇ、いきなり。ちょっとかくまらせて」
結夢が、奥のベッドで横になっているピロリンに向かって言った。
ピロリンは結夢の顔を見るなり起き上がり、結夢とあたしと、あたしの後ろに居る叶チャンの顔を見回した。
いきなりのお部屋訪問。
二人の部屋だったなんて。
あたしは驚きながらも、いきなり一般のお宅に訪問しちゃう、迷惑きわまりない何かの番組を思い出していた。
事の経緯を二人に簡単に説明し、少しの間かくまらせてもらう事になった。
「男子はまだ点呼終わってないの?」
結夢がピロリンに言った。
「そーいや、まだ来てないな」
ピロリンは思い出す様に呟いた。
まだ来てないって、もう10時なのに。
先生忘れてるのかな。
点呼が終わるまでは、いつまた先生と鉢合わせちゃうか分からないし、出て行けない……。