Distance‐マイナス5cm‐
「ただいまー」
そう言って家に入ると、
「おかえり」
今では当たり前の様に返ってくるその言葉。
スーツケースを一旦リビングに置いてキッチンを覗くと、お母さんとお父さんが食卓を囲んでいた。
そっか、今日は土曜日か。
もう結構夜遅い時間なのに、二人はあたしの帰りを待っていてくれたんだね。
手を洗い、部屋着に着替え、久しぶりの家族団欒を楽しんだ。
あたしは二人に修学旅行の話を沢山して、三人お揃いのパンダのストラップを渡した。
「これで寂しくないでしょ」
お父さんにそう言ったら、お父さんははにかみながら、早速ストラップを携帯に付けていた。
修学旅行はあたしにとって、最高の思い出。
でも、そう思っていたのはあたしだけだったのかな。
叶チャンは……
誠は……
この時、それぞれに、複雑な想いを胸に秘めていたんだね。