Distance‐マイナス5cm‐
叶チャンの顔を見上げると、また、寂しそうに笑っていた。
「これで約束、果たしたから」
叶チャンはそう言って、踵を返した。
「あ、ありがとう」
あたしの言葉に軽く手を上げて、叶チャンはそのまま家の中に消えていった。
あたしは貰ったお土産を胸に抱き、自分の家へと戻った。
お土産をポケットの中にしまい、キッチンに行くと、もう夕ご飯が並べられていた。
「叶一クン、何だったの?」
テーブルにスプーンを並べていたお母さんが、微笑みながら問い掛けてきた。
「お土産もらっちゃった」
あたしはポケットにしまった七宝のピアスを取り出し、お母さんにヒラヒラと見せる。
「そういえば霧島サン、再婚するみたいじゃないか」
お父さんはそんなあたし達を見ながら、思い出した様に言った。
一瞬、何の事か分からなかった。