Distance‐マイナス5cm‐
リビングのソファーに座ってテレビを観ている叶チャン。
洗い物が終わったあたしは、ウサギのエプロンを畳んでその隣に座った。
テレビにはバラエティ番組が映し出されている。
叶チャンはそれを観て笑うわけでもなく、ただボーっと見ている感じで、テレビの中の笑い声だけがやけに煩く聞こえてくる。
「………ねぇ、叶チャン」
テレビを何と無く見ながら言う。
「ん?」
テレビに目を向けたままの叶チャンに、不安を言った。
「あたしさ、叶チャンに迷惑掛けてるかな……」
「何を今更」
「今更って……」
サラっと答える叶チャンに、苦笑いした。
やっぱり、迷惑だって思われてたんだ……
ホント、今更気付くなんて馬鹿過ぎる。
「迷惑なんて昔から掛けられまくりだし」
叶チャンは、あたしの気持ちなんて知らないみたいに続けた。
もう分かったから……
それ以上言わなくてもイイのに。
視界が歪んで、涙が溢れるのが自分でも分かった。
涙を必死で堪えたら喉が痛くなって、声が出せなかった。