Distance‐マイナス5cm‐
誠との帰り道も、あたしは学校に居た時と変わらなかった。
何をしていても叶チャンの事しか考えられなくて、誰の声も聞こえない。
ただ、一人を除いては……
グイッ
後ろから引かれる繋がれた手に、あたしは足を止めて後ろを振り返った。
誠は足を止めて、真剣な顔をして、あたしを見ていた。
あぁ、あたしは誠が歩みを止めたのも気付かず、一人で歩いていたんだ。
冷静にそんな事を思った。
「のん、お願いあるんでしょ?言って」
真剣な顔をした誠の口から出た言葉はこんな言葉で
あたしはやっぱり目を伏せた。
「今日ね、叶チャンと話したい事あるから、これから行ってイイ?」
「……イイよ」
誠がどんな顔をしてその言葉を言ったのかは、やっぱりあたしには分からなかった。