Distance‐マイナス5cm‐

「何で、そんな顔すんの?」


あたしに顔を向けた叶チャンは、そう言ってあたしの顔に手をのばした。



叶チャンの指があたしの頬に触れて――



零れた涙をすくってくれた。




あぁ……

あたし、泣いてたんだ。





「やっぱ、永遠なんてないよな……」


あたしの涙をすくってくれた叶チャンは、あたしよりも悲しそうな顔をしていた。




永遠……。



叶チャンが言っていた、


“形がある物はいつか壊れる”

“始まりがあれば終わりもくる”




叶チャンのお父さんとお母さんは、幼なじみで――……



「親父、ずっとお袋の事待ってるって、言ってたんだけどな……」



叶チャンは、そう言って俯いた。




「叶チャン……」




握った手と違う方の手を、叶チャンの顔にのばした。



だって、泣いてるのかと思ったんだ……。




だけど叶チャンは、のばしたあたしの手を掴んで


顔を上げて、笑った。





「何でお前が泣くんだよ」




何で、叶チャンは笑えるの?


何で――……



「叶チャンは、何でいつも笑うの?」



寂しそうに。





ねぇ、どーして?
< 409 / 481 >

この作品をシェア

pagetop