Distance‐マイナス5cm‐
おじさんとは対象的に、叶チャンは怖い顔をした。
「俺は親父に呆れただけだ。あんだけ再婚はしないって言ってたくせに。それに、いきなり現れた奴を母親になんか思えるかよ」
叶チャンはそう言っておじさんを睨んだ。
でもその睨みに怯む様子も無く、おじさんは優しく笑って言った。
「再婚する相手は、お前の母親だ、ホントの。言ってなかったっけ?」
叶チャンの、お母さん?
え、どーゆう事?
叶チャンも、おじさんの言った事が飲み込めていないのか、唖然としている。
「まぁ、詳しい事はちゃんと話すから、取り敢えず飯にしよう。のぞみチャンも一緒に食べてって」
おじさんはそう言って、買ってきたらしいお惣菜などが入った袋をキッチンの方に置いてから、着替える為か、部屋に消えて行った。
リビングに取り残されたあたし達は、ただ呆然とその姿を見送った。
叶チャンのお母さん。
ホントのお母さん。
あたし達が小さい頃に、家を出ていった叶チャンのお母さん。
これって、イイ事……
だよね?
叶チャンの横顔をチラッと見ると、複雑な顔をしていた。