Distance‐マイナス5cm‐
「父さんと母さんが幼なじみだったって事は、叶一も知ってるよな?」
おじさんにしては珍しい、真剣な顔に声。
あたしと叶チャンはおじさんの顔を見返し、静かにその声を聞いた。
「実は幼なじみは、もう一人いたんだ……」
もう一人の、幼なじみ……
その言葉を聞いて、何だか切なくなった。
何と無く、何と無くなんだけど、胸がざわついた。
その気持ちから少し目を伏せるあたしとは違い、叶チャンは相変わらず睨む様におじさんを見る。
叶チャンと久しぶりの夕食だと言うのに、この張り詰めたような空気は、あたしの心を弾ませてはくれなかった。
「本当は母さんは、そいつと付き合っていたんだ。でも、ちょっとしたすれ違いから別れる事になって……父さんは母さんが好きだったから、結婚した」
三角関係……
だったのかな。
幼なじみ同士で、叶チャンのお母さんを取り合ったのかな……。
叶チャンの顔を見る事が出来ない。
今、叶チャンはどんな顔してる?
どんな事思ってる?