Distance‐マイナス5cm‐
三人の幼なじみ
その話を聞く事になったのは、本当に偶然だった。
その人とこんな場所で会う事自体、珍しいんだから。
あたしは学校帰り、結夢とクリスマスプレゼントをデパートで探している時、声を掛けられた。
「のぞみチャン、今帰り?」
顔を上げると、スーツを着た叶チャンのお父さんが微笑んでいた。
その姿だけ見ると、高校生の息子がいるなんて全然思えないくらいカッコ良くて、爽やかで、
あぁ、そういえばおじさんはまだ30代だったな……
なんて事を思い出した。
結夢に「誰?」と目で言われながら肘でつつかれ、
「叶チャンのお父さん」
と小声で言うと、明らかに驚いた顔をされた。
それからおじさんと少し話す事になり、結夢は気をきかせて帰って行った。
いつもだったら知り合いの家族に会っても挨拶で終わるんだけど、おじさんと会うのはあの話をした日以来で、立ち話だけで終わりたくはなかった。