Distance‐マイナス5cm‐
それは夏のある日。
突然良樹から告げられた。
「俺達付き合う事になったから」
遥の肩を抱きながらそう言う良樹は、嬉しそうだった。
そして遥も、背の高い良樹の顔を見上げながら、幸せそうに微笑んでいた。
「良かったじゃん」
俺は笑顔で祝福してやった。
口許だけの笑み。
俺は遥が好きだった。
幼なじみって枠を越えて、それ以上の感情があった。
この時の俺は、良樹に遥を取られた事が悔しくて、二人とは疎遠になっていった。
俺達の友情なんて、所詮こんなもんだったんだなと思った。
でもそれはガキ特有の勝手な被害者意識で、俺の甘えだったな。
それからの二年間は荒れに荒れて、警察の世話になりっぱなしで。
遥や良樹に諭される度、その荒れ様は激しくなっていった。
「隼人ッ!もうイイ加減にしろ!!」
そう言って、良樹は俺を殴った。
「上等じゃねーか!」
俺も良樹に殴り掛かった。
だけど俺は、上げた手を振り下ろす事が出来なかった。