Distance‐マイナス5cm‐
四年の年月が流れ、平凡だけど幸せな毎日を過ごしていた。
叶一とのぞみチャンは、毎日仲良く遊んでいる。
二人で、大人になったら結婚するなんて話もしている。
ほほえましくて、この幸せがいつまでも続いていけばイイと思った。
だがある日の一本の電話が、俺達の運命を変えた。
いや、本来はこれが正しい運命で、俺の今の幸せが、間違った道だったのかもしれない……。
『良樹の母です。お久しぶりです、隼人クン。実は、お話したい事があって……』
良樹の名前を聞くのは、本当に久しぶりだった。
遥達が別れてから、その名前は俺達の間では禁句になっていたから。
「……話とは?」
心臓を鷲掴みされたような苦しさが、俺を襲った。
穏やかな毎日に、いきなり現れた小さな不安。
真っ白な紙に、一滴の黒いインクが落とされ、それは、少しずつ滲んでいった。
『良樹の事を、話したいんです』
俺は五年ぶりに、良樹の母親と会う事になった。