Distance‐マイナス5cm‐
「良樹は……?」
良樹は生きているのか?
呟いた俺の声は、少し震えていた。
「良樹は……生きているわ」
おばさんのかすれた声は
「でも――」
と続いた。
「でも……何ですか?」
馬鹿みたいに心臓が早鐘を打って、手には汗が滲んでいる。
だけど俺はちゃんと、聞かなきゃいけない。
「五年経ったら、良樹、隼人クン達に会いに行くって言ってたの。殴られるくらいの覚悟で、それでも会いたいって……」
おばさんの目に涙が浮かんだのを見て、俺の背筋に冷たいものが通った。
良樹は、生きているんだろ?
だったら、どーして泣くんだよ。
俺は何も言わず、おばさんを見つめる。
「今年で五年目で、やっと会いに行けるって、喜んでいたのに……」
いたのに?
その続きは何なんだよ。
なぁッ!!
「再発して、肺にまで転移して……もう……」
おばさんのとめどなく溢れる涙を見て、その続きは、聞かなくても嫌でも理解した。