Distance‐マイナス5cm‐
もう、長くはないって事なんだろう。
でもさ、もしかしたら、もしかしたら治るかもしれない。
奇跡ってヤツがあるかもしれない。
東京にある大きな病院。
一人部屋のベッドで横たわった、良樹の泣き顔を見た時、俺はそう願わずにはいられなかった……。
遥に話す事が出来たのは、良樹の母親と会ってから、半月後。
遥は、泣かなかった。
でも俺は分かっていた。
この時の遥の気持ちを。
良樹を支えたいって思う自分の気持ちを、必死に押し込めている、遥の気持ちを。
「遥はどーしたい?俺は、遥がまだ良樹を想ってる事、知ってる。遥、後悔だけはして欲しくない」
俺が何度そう言っても、遥は笑って言った。
「私にはあなたや叶一がいるのよ?大切な家族。私は家族を守りたい」
それもきっと、遥の本心だったんだろうと思う。
だけど少しずつ、時間と共に、遥は不安定になっていった。
もう、限界だと思った。