Distance‐マイナス5cm‐



もう、長くはないって事なんだろう。






でもさ、もしかしたら、もしかしたら治るかもしれない。


奇跡ってヤツがあるかもしれない。








東京にある大きな病院。


一人部屋のベッドで横たわった、良樹の泣き顔を見た時、俺はそう願わずにはいられなかった……。











遥に話す事が出来たのは、良樹の母親と会ってから、半月後。



遥は、泣かなかった。



でも俺は分かっていた。

この時の遥の気持ちを。




良樹を支えたいって思う自分の気持ちを、必死に押し込めている、遥の気持ちを。






「遥はどーしたい?俺は、遥がまだ良樹を想ってる事、知ってる。遥、後悔だけはして欲しくない」



俺が何度そう言っても、遥は笑って言った。



「私にはあなたや叶一がいるのよ?大切な家族。私は家族を守りたい」




それもきっと、遥の本心だったんだろうと思う。




だけど少しずつ、時間と共に、遥は不安定になっていった。







もう、限界だと思った。
< 430 / 481 >

この作品をシェア

pagetop