Distance‐マイナス5cm‐
今日はいつもよりもずっと長く感じた学校。
叶チャンの事が気になって、授業どころじゃなかった。
そしてようやく長い拘束から開放され、薄暗い帰り道を誠と二人で歩いている。
冬の匂いと、去年あたしが誠にあげた香水の香りが、風に乗ってあたしの鼻をかすめる。
空気は刺す様に冷たく、チカチカと点滅する、外灯の仄かな明かりがあたし達を照らした。
最近、誠と二人で居ると、胸が苦しくなる。
罪悪感から……?
誠を好きな気持ちは本当で、この繋ぎ慣れた手を心地良く感じるのも本当で……
でも胸が苦しいのは、いつもあたしの中には叶チャンがいるから。
「誠、今日もちょっとお願いがあるの……あのね、」
「イイよ」
「……え?」
あたしがその先を言う前に、誠は言葉を遮り、了承した。
眉をひそめ、誠の顔を見上げる。
誠も、眉をひそめて笑っていた。
「イイよ」
そしてもう一度そう言って、目を伏せた。
そんな誠を見て、あたしは泣きそうになっていた。
鼻の奥がツーンとする。
冬の風によって渇いていた瞳が、潤みだす。