Distance‐マイナス5cm‐
ごめん。
ごめんね、誠。
きっと今、あたしは泣くべきじゃない。
あたしが泣いてどーするんだ。
俯き、涙を見せないように精一杯堪える事しか、あたしには出来ない。
誠は、そんなあたしの手を離したりはしなかった。
ぎゅっと、強く、そこから誠の優しさや悲しみが伝わってくるくらい強く、強く、握った。
家の前まで着くと、あたしは誠の背中を見送った。
そして一人で、叶チャンとも、誠とも行った事のあるスーパーに向かった。
思えばいつも、ここで買い物する度、誠に罪悪感を抱いていた。
あたしは心の中で、何度誠に謝ってきたかな……。
ハンバーグの材料を買い、また、心の中で誠に謝りながら家路へと急いだ。
叶チャンの家が見えてくると同時に、その家の門に寄り掛かっている人影が確認出来た。
歩みを進めると、その人影がはっきりと見えてくる。
私服姿の叶チャン。
「……おかえり」
小さくあたしが呟くと、
「のぞみも、おかえり」
叶チャンはそう言って笑った。