Distance‐マイナス5cm‐

あたしと誠は向かい合わせに座った。


店内は暖房がきいていて、窓ガラスを曇らせていた。

流れる音楽は、クリスマスソング。




去年ここで、誠が甘党で、コーヒーに砂糖を五つ入れる事を知った。


あの時の様に、誠はコーヒーを、あたしはレモンティを注文した。




「去年と同じデートプランだね」


あたしが笑いかけると、誠も小さく笑った。






注文した物が運ばれてきて、誠の前に砂糖の瓶を置こうとしたら、それを止められた。


「もう、砂糖は入れない事にしたんだ」


そう言ってブラックのまま、カップに口を付けた。




「だ、大丈夫なの?」


「全然大丈夫」


そしてもう一口、誠はブラックコーヒーを飲んだ。







何だか少し、誠を遠くに感じた。


どーしてだろう。




あたしはカップに入った紅茶の中に沈む、薄くスライスされたレモンに目を落とした。



去年の事を、昨日の様に感じるのに、それはやっぱり一年も前の事で、あたし達は変わったんだね。





何と無く空気が重くて、気分を変えようと窓の外に目を向けた。
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