Distance‐マイナス5cm‐
外はもう薄暗く、でもチラチラと降る白い物が、曇ったガラス越しに見えた。
「雪になった……」
呟くと、誠も窓の外に目を向けた。
「ホワイトクリスマスだな」
嬉しそうに笑う誠に、愛しさを感じた。
喫茶店を出ると、雪の結晶は店内で見た時よりも大きくなっていた。
あたしは白い息を吐きながら、空を仰ぐ。
見上げた空は真っ黒で、チラチラと降る雪が、白さを主張していた。
「行きたい所があるんだけど、イイ?」
そう言ってあたしの手を握る誠に、あたしは頷いた。
向かった先は、昼間に見たツリー。
ライトアップされたツリーは、昼に見た時よりも数倍綺麗で。
間違い無く、この街の主役はこのツリーだった。
「のんと見ておきたかったんだ」
それはどーゆう意味なんだろう。
去年の約束通りなら、また来年も、そのまた来年も、一緒に見れるんだよ?
でもあたしは聞けなかった。
誠がこの時、どんな思いからそう言ったのか、あたしは気付かないフリをし続けたかったから。