Distance‐マイナス5cm‐
あれで緊張してたんだ。
“男の役目だろ”
そう言ってあたしを送る事を提案してくれた誠。
“フェミニスト?”
“のんにだけね”
悪戯っ子みたいに笑ったその顔と台詞に、あたしは胸をときめかせたね。
「のんに告ったのも、帰り道だったな……」
あたしはその時、まさか誠があたしを好きだなんて思ってなくて
“バカじゃないの!?”
って言ったっけ。
だって、友達だと思ってたんだもん。
あの頃はまだ叶チャン以外の人を好きになるなんて思わなくて。
でも誠の事を気にしている自分もいて。
「付き合ったのも、初めてキスしたのも、ここだったな」
あたしの家の前。
いつの間にか着いていた。
誠はあたしの家を見上げ、あたしに視線を落とす。
そして、小さく微笑んだ。
「クリスマスプレゼント、貰ってイイ?」
「……え?」
クリスマスプレゼント、誠が欲しい物があるって言っていた。
こんな所には何も売ってないし、あたしは何も持っていない。
眉をひそめて誠を見ると、誠は目を伏せて呟いた。