Distance‐マイナス5cm‐
どれくらいそこに立っていたんだろう。
もう雪はやんでいた。
無心で家に入り、自分の部屋に入ると、現実に引き戻された気分になった。
さっきまでの事はやっぱり夢で、あたしはまだ誠の彼女で……
そう思って左手の薬指を見ると、もう、そこには付き合っている証が無かった。
誠との思い出が、フラッシュバックする。
“笑顔ののんを嫌いな奴なんていないと思うぞ”
元気付けられたメール。
“明日も送るから!一緒に帰ろうな!”
初めて、一緒に帰った日。
“本気だから!霧島になんか負けねーよ!”
誠に告られた、帰り道。
“イイなぁーって思ってたら、好きになってた”
誠の中学時代の事を、初めて知った日。
“何でそんなに可愛いの?俺以外に見せたくない”
顔を赤くしながら、あたしのドレス姿を褒めてくれた文化祭。
“ここで見せつけてんの。俺の唯一の強がり”
家の前で交わしたキス。
“なッ、別に寂しかったわけじゃねーし!”
ワンコールで出た電話。