Distance‐マイナス5cm‐



どれくらいそこに立っていたんだろう。


もう雪はやんでいた。




無心で家に入り、自分の部屋に入ると、現実に引き戻された気分になった。



さっきまでの事はやっぱり夢で、あたしはまだ誠の彼女で……



そう思って左手の薬指を見ると、もう、そこには付き合っている証が無かった。






誠との思い出が、フラッシュバックする。





“笑顔ののんを嫌いな奴なんていないと思うぞ”


元気付けられたメール。



“明日も送るから!一緒に帰ろうな!”


初めて、一緒に帰った日。



“本気だから!霧島になんか負けねーよ!”


誠に告られた、帰り道。



“イイなぁーって思ってたら、好きになってた”


誠の中学時代の事を、初めて知った日。



“何でそんなに可愛いの?俺以外に見せたくない”


顔を赤くしながら、あたしのドレス姿を褒めてくれた文化祭。



“ここで見せつけてんの。俺の唯一の強がり”


家の前で交わしたキス。



“なッ、別に寂しかったわけじゃねーし!”


ワンコールで出た電話。
< 453 / 481 >

この作品をシェア

pagetop