Distance‐マイナス5cm‐



制服の上からダッフルコートを着て、家を出た。





“おはよう”



誠の声が聞こえたような気がして辺りを見回した。



でも、そこには誰も居なかった。





雪はあたしの膝位まで積もっているけど、除雪車が朝早くから仕事をしてくれるから、歩くには困らない。


冷たい空気に身震いした。


天気は曇り。


薄暗い景色。


ただ、雪の白だけが眩しかった。





冬の朝は、こんなに寒かったんだ……。


こんなに、暗かったんだ……。






一人で歩く通学路は、まるでいつもと違う様に感じた。




誠の存在は、やっぱり大きかった。














門をくぐり、教室へと向かう。



教室の戸をガラガラと開け、自分の席を目指した。



「のん、あけおめー」


明るく声を掛けてくる結夢に、あたしは小さく微笑み返した。



続々と登校してくるクラスメート達。


教室内がガヤガヤと煩くなり始めた頃、叶チャンとピロリンも入ってきた。



「おはよう」

「おーっす」

「あけおめー」

「おはよ」


四人で顔を合わせると、なぜかホッとする。
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