Distance‐マイナス5cm‐
「俺はさ、のんに我慢させてでも、本当はずっと一緒に居たかったんだ。でも……」
誠はまた小さく笑い、あたしの頭を撫でた。
「悩んだから、辛い方を選んだ。たいていそれが、正解だから」
誠はあの日、何て言ったかな。
“大切なモノを失う事よりも辛いのは、自分で大切なモノを壊してしまう事”
あれは、強がりだったのかな。
誠らしい、強がり。
誠と出逢って、色んな事を知った。
嫉妬や、愛しさや、寂しさや、温かさや、切なさや、恋しさや……
まだまだ沢山。
でも何よりも、本当の愛を知れたよ。
この愛を、気付かせてくれた誠に感じる事が出来たら、どんなに良かったかな。
強くて優しい誠。
あたしを、誰よりも愛してくれた誠。
ねぇ、今は
“ごめん”じゃなくて
“ありがとう”を伝えたい。
いつも誠に謝っていた、心の中。
今は、ありがとう。
ありがとう、誠。
「あたし、誠に出逢えて本当に良かった」
未来で気付く過去の意味。
少しだけ、気付けた気がするよ。