Distance‐マイナス5cm‐
「叶チャン……」
声を掛けると、叶チャンは振り返った。
その姿はとても綺麗で。
王子様みたいで。
整った顔立ちに、タキシードがとてもよく似合っていた。
あたしはそんな人に見詰められるのが恥ずかしくて、俯いた。
あたしなんて、まるで七五三だ。
叶チャンは俯くあたしの手を、優しく握った。
顔を上げると目が合って……
優しい笑顔に、あたしはまた頬を赤く染めるんだ。
「のぞみ……」
なんて言われるんだろう。
「綺麗だ」って言ってくれるかな。
そんな期待に高鳴る胸の鼓動。
「のぞみ……七五三みたいだな」
「ヒドッ!」
膨れるあたしに、叶チャンは思い切り笑った。
だからあたしも、まだ今は七五三でイイや……
なんて思うんだ。