Distance‐マイナス5cm‐
一日体験を終え、二人で街を歩く。
そう言えば、叶チャンとこんな風に街を歩くのなんて、本当に久しぶり。
「これから俺ん家来ない?」
「え?」
叶チャンはまたあたしの手を取り、微笑んだ。
「渡したいもんがあるんだ」
叶チャンの家のリビングに通され、あたしの特等席のソファーに座る。
叶チャンはあまり大きくはない包みを部屋から持ってきて、あたしに渡した。
あたしはそれを受け取り、開ける。
「……エプロン」
中にはピンクのエプロンが綺麗に畳まれて入っていた。
それを取り出し広げると、裾の近くに小さくウサギのマスコットがいた。
「それ買うの、スッゲー恥ずかしかった」
苦笑する叶チャンに、あたしは首を傾げた。
何でエプロンなんだろう。
あたしには叶チャンが作ってくれた宝物のエプロンがあるのに。
そんな考えを読み取ったのか、叶チャンは言った。
「俺、あのエプロン持ってくから。その代わり」
あたしの隣に腰掛け、頭を優しく撫でられる。