Distance‐マイナス5cm‐
「えッ?昼飯って……てかあたしの名前なんで」
大きな目を更に大きく見開き、驚いた顔を俺に向ける。
俺はその表情が何だかおかしくて
「何ででしょうね?」
と言って、『望月みさき』と書かれた胸のネームプレートを指さした。
「……あッ」
店員は俺の指さした場所に視線を移し、小さく声を上げた。
「じゃ、頑張って」
彼女が気付いた所で、俺は笑って店を出た。
何でこんな事をしたのか、自分でも不思議に思う。
ただ何と無く――
食欲が無くなって、彼女が……
『みさき』サンだったから。
俺がこの日、気付かなかった事が二つだけあった。
俺が店を出た後、彼女は小さな声で
「遠野誠……」
と呟いた事と、
これが、運命の出逢いだったって事。
でも俺がそれを知るのは、もう少し未来の話……。