Distance‐マイナス5cm‐


それからずっと、結夢とは話さなかった。

今日から放課後は、部活に入っていない人以外はクラス全員で残って、文化祭の準備をする事になっていたのに……

責任感の強いはずの結夢は、鞄を持って終礼と共に教室を出て行った。

あたしは結夢の後ろ姿を教室から眺め、引き止める事は出来なかった。


あたしだって怒ってんだから……

結夢の事は気にしないようにして、準備に取り掛かった。



みんなそれぞれ、ダンスの練習や衣装に使う布の買い出し、照明機器を借りに行ったりと、初日は何かと忙しかった。

衣装は、家にある服を持ち寄ったり、安いドレスを買ったりして、それにまた手を加えるみたいだった。

照明関係も、あたし達のクラスは体育館のステージを使える事になり、音響も同時に確保できた。




七時になる頃、皆は作業をやめ、それぞれ帰って行った。

「のん、また明日頑張ろう♪じゃあね〜」

「うん、気をつけてね」

「じゃあね〜」

皆に手を振り、昨日と同じように誠と二人になった。
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