Distance‐マイナス5cm‐


終礼が終わり、みんなは明日の準備を始めた。

誠は教室のドアの前で、誰かと話をしている。

最近、いつも誠を目で追っている事に気付いた。


あぁ……
どーしちゃったんだろ、あたし。


自分の無意識の行動が理解できなくて、自問自答する毎日。

そんな時、あんまり聞きたくない人の声が聞こえてきた。

「誠、ずっとサボらないで出てたじゃん。今日ぐらい付き合ってよ」

「それがさ、そうもいかないんだよね。ごめんね」


――真希サン……

誠が話している相手は真希サンだった。

どーやらあたしの耳は、真希サンの声に過敏に反応してしまうらしい。

自分の耳を恨めしく思った。



そして何と無くその声の方を向いた時……


前にもされた、凄く恐い目で睨まれた。




――恐い。


あたし、真希サンに何かしたかな……



恐いのに、目をそらす事ができない。



先に視線をそらしたのは真希サンだった。

さっきあたしに向けられた目とは違う、穏やかな笑顔で誠を見て、去って行った。

そして誠と目が合った。

不覚にも安心してしまう。

そんなあたしの表情に気付いたのか、誠はいつもの笑顔で笑った。
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