Distance‐マイナス5cm‐

「今日、みんな帰ってから、ちょっと話できない?」

「え、えと……」

その笑顔で近づく誠に、上手く返事ができなくて、あたしは俯いた。

「じゃあ後でね」

あたしの返事も聞かず勝手に決めて、みんなが準備してる輪の中に入っていく。



てか……


てかこんなのあたしのキャラじゃない!

話だって何だってしてやろうじゃない!

心の中で活を入れて、あたしもその輪の中に入っていった。








――七時。


「じゃあ明日頑張ろうねぇ」

「ばいば〜い」

「殿遅刻して来んなよ」

「おめーだろ」

最後の準備も終え、みんなはそれぞれ帰っていく。

「のん、早く帰ろ♪後片付けは明日の朝でも大丈夫でしょ」

結夢は早く早くと、廊下から呼びかけてくる。

「あ、結夢、あのね……」

一瞬、このまま誠との約束は忘れたフリをして帰っちゃおうかと思ったけど……

「結夢、今日は俺がコイツ借りるから。先帰ってて」

そんなあたしの思惑を悟ったのか何なのか、誠は阻止した。

「あぁ〜、そーゆう事ぉ。じゃあお先にぃ〜、ばいば〜い♪」

結夢はいつものニヤニヤした笑いを浮かべ、帰って行った。
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