Distance‐マイナス5cm‐

あたしはまた俯いた。

このモヤモヤした気持ちがもどかしくて……


「誠、なんか変わったよね。委員の仕事も、絶対サボるんだろうなって思ってた」


そんな気持ちを紛らわせる為に、話を振った。



「あぁー。俺さ、中学ん時学校とかダルくて、サボってばっかで遊んでたんだよね。まぁ自慢じゃないんだけど、こう見えて天才でさ」

「バカじゃないの」

どこまでが本気なのか分からない態度に、あたしは苦笑しながら茶々を入れた。



「まぁ、何にも努力しなくても何でもできたんだよ。意外にモテるし?」


「アホ」



あたしの冷やかしにもめげず、誠は微笑みながら続けた。



「でも卒業する時さ、何にも残ってねーなぁって思った。中学三年間の思い出が何にも無かった。それってスゲー寂しい事だった」




顔を上げて誠を見ると、さっきまでの笑顔は、本当は寂しい笑顔だった事に気付いた。
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