Distance‐マイナス5cm‐


初めて知った、誠の中学時代の事。

いつも楽しそうにしてて、バカ殿って言われてて……



あんな事思ってたなんて知らなかった。


でも、聞かせてくれた事が嬉しかった。



「明日は頑張ろうねぇ」

「おう、俺の足踏むなよ」

「そっちこそ!」

何だか久しぶりに、こうやってバカ言い合って笑ってる。



心地良かった。


ダンスの練習中もずっと顔見ないようにしてたし、話さないようにしてたから。

勿体なかったな……



「衣装も可愛いし、超楽しみ♪」

「馬子にも衣装だな」

「うっさいなぁ!あ、そーいえば、教室の鍵しめたっけ?」

「俺は鍵持ってないけど」

「しめて……ないかも」


こんな大事な事忘れるなんて!

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ

と念仏のように、あたしの頭と心臓は言っている。

「あたし、教室戻る!」

踵を返して、今来た道を逆走する。

誠も慌てて、あたしに続いた。


なんか嫌な予感がする……

あたしのこーゆう予感はあんまり当たらないけど、今は本当に当たらないで欲しいと願った。
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