Distance‐マイナス5cm‐
校舎に入り、廊下に出ると、あたしのクラスだけ明かりが漏れていた。
なんで……?
電気は消したはずなのに。
嫌な予感は更に強くなって、心臓を締め付ける。
冷や汗で濡れた手の平を、胸の前で合わせた。
誠があたしの顔を一度見てから教室のドアに手を掛けた時、中から話し声が聞こえてきた。
“マジこれくらいやんないと気が済まないでしょ”
この声……
“だよねー。叶一クンと誠クンを二股掛けるなんて、マジ有り得ないし”
……真希サン。
“まぁ、叶一は三崎のぞみと付き合う事は絶対無いって言ってたけどねぇ”
“それマジウケるし。三崎サンかわいそ〜♪”
叶チャン……
嫌だ、聞きたくない。
体が震えた。
誠の腕をギュッと掴んだ。
それを合図に、誠は教室のドアを開けた。