Distance‐マイナス5cm‐
震える脚で、躓きそうになりながら真希サンに駆け寄り、ドレスを奪った。
「あ、あんた、調子に乗んないでよッ。叶一クン、あんたの事何て言ってたか分かる?」
――やめて……
もうドレスと呼べないようなボロボロの布を抱きしめ座り込むあたしに、真希サンは吐き捨てた。
「幼なじみとなんか付き合うわけがない。って言ってたんだから」
「おい真希ッ、いい加減にしろよ!」
――もう、やめて……
誠の怒声が教室中に響き、今にも胸倉を掴みかかりそうな勢いで、真希サンに詰め寄る。
――叶チャン……
「ホントだから!マジでそう言ってたんだからね!」
真希サンはハサミを投げ捨て、教室から出て行こうとする。
その腕を誠は掴んだ。
「今度コイツに何かしたら、ただじゃおかねー」
誠の口から発せられてるとは思えない、どすの利いた声で言った。
真希サンは腕を払い、もう一人の女の子もそれに続いて教室を駆け足で出て行った。
――誠……
「大丈夫か?」
誠はしゃがんで、少し戸惑いながら、あたしの肩を抱いた。