Distance‐マイナス5cm‐


「ま……ことぉ。ごめん……ね、ごめ…ん……うぅッ」

あたしはそのまま、誠の胸で泣いた。


「謝んなって」

そう言った誠の声は優しくて、余計に涙が溢れたけど

安心した……。






――ドキドキする




――心が温かくなる




――この気持ち、知ってる








どれくらいそうしていたんだろう。


誠の胸に顔を埋めたまま、溢れる気持ちを押し止めた。

「誠……、もう大丈夫。ありがとう」

誠の胸を軽く押し、顔を上げた。


その時初めて知った、誠の辛そうな表情。


――そんな顔しないで、あたしは大丈夫。


精一杯あたしは笑ってみせた。


「誠がそんな辛そうな顔する事ないよ。あたしが今笑えるのは、誠のお蔭だよ。いつも、あたしを笑顔にしてくれるのは誠だから」

誠は自分が辛そうな顔してた事なんて気付かなかったみたいで、顔を背けた。

「……なんで俺が慰められてんだよ。ダセー」

そう言って、今度は顔を赤くした。


誠の赤い顔なんて初めて見たな……
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