Distance‐マイナス5cm‐
「それ……マジで言ってんの?」
誠は放心したみたいに言った。
「なッ、こんな事で嘘つくわけないでしょ!」
「ホントに?マジで?」
「ホントにホントでマジだよッ」
それでも疑う誠に、恥ずかしさから少し自棄になって言った。
もうッ、何回も言わせないでよ!
またあたしは顔を背けた。
「あの……そんな事言われたら、待てないんだけど」
「へッ?わッ……」
腕をグイッと掴まれ体勢を崩したあたしは、そのまま後ろへ倒れ……
はしなく、ポスッと、恐らく誠の胸に納まった。
「えッ、あッ、あのッ……」
心臓が跳びはねて、全身が熱くなって、あたしは動けなくなった。
「なぁ、俺じゃダメ?霧島の事なんか忘れさせてやるから」
誠の甘い声と吐息が、耳にかかった。
――誠……
耳が熱い。
ドキドキして息ができない。
あたし、ホントにホントにどーしちゃったんだろ……
胸がきゅうぅってなって、何だか涙が出そう。
「……誠」
勇気を出して振り返ると、目の前には真っ赤な誠の顔があって。
至近距離で目が合った。
でも、目がそらせなくて。