Distance‐マイナス5cm‐
スキップしながら辿り着いた1-8。
叶チャンのクラス。
「叶チャ〜ン、一緒帰ろう〜」
1-8と書かれた頭上のプレートを確認して教室のドアを少し開けると、色んな人の話し声の中に、甘ったるい声であたしの愛しの人を呼ぶ声が聞こえた。
“叶一〜今日あたしんち来なよ〜。親居ないんだぁ”
“マジでぇ。行っちゃおうかなぁ”
“じゃあ今日はぁ……”
おとりこみ中ですか!!
教室の中を覗くと、今にも唇がくっついちゃうんじゃないかって距離で、叶チャンは今日も女の子とイチャイチャしている。
叶チャンは面食いだ。
そして女の子を取っ替え引っ替え。
まぁ、それだけモテるからなんだけどね。
傷付かないわけじゃないけど、慣れって恐いもので、もう何度も遭遇してる場面には今更涙も出ない。
終いには、この子で何人目だろう…なんて事を考えちゃってるあたしがいたり。
教室の戸に背を向け、寄り掛かった。
あーぁ、暑いなぁ……
秋だってのに、九月の陽射しは廊下のあたしにも届くくらい眩しくて暑い。
それはきっと、陽射しの所為だけじゃなかった。