Distance‐マイナス5cm‐
てかこの学校、警備員もいなけりゃセコムもついてないの!?
どんだけー!よッ!!
「あ、あたしッ、一旦家帰るぅー!!」
あたしは鞄を掴んで、ニヤニヤしてるクラスメート達を尻目に、走って教室を出た。
校門を出る頃、あたしの頭はやっと落ち着いてきた。
――誠置いてきちゃったけど、バカ殿なら大丈夫よね。
取り敢えず早く家に帰って、お風呂入ろ。
「ただいまー」
って、普通に帰って来ちゃったけどどーしよう!?
朝はもう仕事で居ないだろうけど……帰ってきたら、家帰って来てないの問い質されるよね。
リビングのドアを開けた。
キッチンテーブルの上には、サンドイッチとサラダが、ラップが掛けられて置いてあった。
『おはよう、のぞみ。
今日も遅くなります。
母』
あぁ……
気付いてないんだ、昨日帰ってない事。
ラップを剥がし、サンドイッチをかじった。
「ホント、どんだけ〜。だよ……」
ホッとした後に、虚しさが込み上げた。
「こんなの、いつもの事じゃない」
娘が居るか居ないかも分からないなんて。