Distance‐マイナス5cm‐
「ごちそうさま……」
一人呟いて、バスルームへと向かった。
お風呂から上がり、制服に着替え、軽くメイクをして家を出た。
玄関の鍵をしめ、顔を上げると。
あッ、あッ、あッ……!
嬉し過ぎて声が出ない。
恋し過ぎて涙が出てくる。
そんな人が歩いてた。
「き、叶チャン!!」
あたしはその人の元へ駆けて行く。
「珍しいな」
久しぶりに見た叶チャンの姿。
眠たそうにあたしを見る。
「あ、あの、今日は午前中は準備だけだから」
嬉しくて、気持ちが舞い上がっちゃって、上手く喋れない。
「あぁ、俺は寝坊」
そして叶チャンはあくびをした。
でもその時、あたしはある事を思い出した。
『幼なじみと付き合うわけがないって言ってた』
真希サンの言葉。
あれはきっと、ホントだった。
あたしは、諦めなきゃなのかな……
何と無く、それも仕方のない事のように思えてきた。
――て、あれ?
あたし、諦めようとしてる?
こんな事は初めてだった。
誠の顔が浮かぶ。