Distance‐マイナス5cm‐


あぁ……。

きっと今あたし、さっきの誠よりも赤い顔をしてる。


両手を頬に当ててみた。


熱い。



てか、そんな事より……






「ファーストキス」





初めてのキスは、叶チャンとって決めていた。

というよりも、勝手にそう思い込んでた。






何だか叶チャンに後ろめたくて、今日は叶チャンの部屋を見上げる事ができなかった。






「キスって、あんななんだ……」


まだ残る唇の感触に戸惑いつつ、唇に触れてみた。




至近距離で目が合った、誠の優しい顔が浮かぶ。



心臓が必死に酸素を体中に送ってる。

思わずしゃがみ込みそうになる。




誠と……



誠としちゃった。



でも、レモンの味はしなかったな。




嬉しいのか悲しいのか、よく分からない感情を抱きながら、冷静に分析してみた。



てか!

何分析してるのよ、あたしのバカ!!


熱い頬を冷えた手で冷やしながら、暗い家の中へと駆け込んだ。
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